SDSの翻訳に求められるポイントは?信頼できる翻訳会社の選び方

SDS翻訳の基礎知識
SDS(安全データシート)とは?
SDS(安全データシート)とはSafety Data sheetの頭文字を取った略称で、化学物質や製品を安全に取り扱うために必要な情報をまとめた文書です。成分の特性や有害性、保管・廃棄方法などを記載し、取り扱い現場での事故防止や健康リスクの低減に役立ちます。
MSDSとも呼ばれていた
MSDS(化学物質等安全データシート)はMaterial Safety Data Sheetの略称で、2012年3月まで日本国内で使用されていたSDSの旧称です。
しかし国際社会との整合性を図るため、2003年7月に国連勧告として採択されていた「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」(GHS:The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)に基づき、MSDSからSDSへと統一されました。
SDSの必要性
SDS(安全データシート)は、化学品の安全対策を講じるうえで欠かせない文書です。 化学品を提供する事業者には、国内外の法令(化学物質排出把握管理促進法・労働安全衛生法・毒物及び劇物取締法・EUのREACH規則・米国のOSHAなど)に基づいてSDSを作成し、提供先へ交付する義務が課されています。またSDSによる正確な情報は事業者の信頼向上につながり、取引先との長期的な関係を築ける点がメリットです。REACHやOSHAなど各国法令の遵守は、当該地域の規制に適合していると示せるため、国際的な信頼も得やすくなります。
SDSに記載する16の項目
SDSに記載する16項目は化学物質排出把握管理促進法に基づき、下記の順序による記載が必要です。
1.化学品及び会社情報
- 化学物質名(単一の化学物質の場合)
- 製品名(混合製品の場合)
- 社名、住所、担当部局、担当者及び連絡先(会社の場合)
- 氏名、住所及び連絡先(個人事業者の場合)など
2.危険有害性の要約
- 物理的と科学的有害性及び影響
- 人の健康への有害な影響と環境への影響
- 化学品特有の危険有害性
- 化学品のGHS分類※及び絵表示(化学品がGHS分類に該当する場合)など
※GHSに基づき化学品の危険有害性を分類し、SDSに分かりやすく表示をすること
3.組成及び成分情報
- 単一化学物質、混合物の区別
- 化学名又は一般名(単一化学物質の場合)
- 各成分名
- 各物質の含有量
- 各物質のCAS登録番号※
- 各物質の官報公示整理番号など
※米国化学会の情報部門が作成・管理を行う個々の化学物質に固有の識別番号のこと
4.応急措置
- 吸入
- 皮膚への付着
- 目への混入
- 誤飲など
5.火災時の措置
- 適切な消火剤
- 使ってはいけない消火剤
- 火災時に発生する危険有害物質について
- 消火活動の際の保護具及び予防措置
6.漏出時の措置
- 人体に対する注意事項
- 保護具及び緊急時措置
- 環境に対する注意事項
- 封じ込め及び浄化の方法及び機材
- 回収と中和などの浄化の方法及び機材など
7.取扱い及び保管上の注意
- 取り扱い上の注意事項(取扱者のばく露防止策・火災、爆発の防止などの適切な技術的対策・エアロゾル・粉じんの発生防止策)
- 保管上の注意事項(混合接触させてはならない化学物質・適切な保管条件及び避けるべき保管条件など)
8.ばく露防止及び保護措置
- ばく露防止(ばく露限界値・生物学的指標等の許容濃度・設備の密閉、洗浄設備の設置など可能な限りばく露を軽減するための設備対策)
- 保護措置(マスク・ゴーグル・手袋などの適切な保護具など)
9.物理的及び化学的性質
- 化学品の外観(物理的状態・形状・色など)
- 臭い
- 凝固点、沸点、融点、初留点及び沸騰範囲
- 引火点、自然発火温度
- 燃焼又は爆発範囲の上限、下限
- 蒸気圧、蒸気密度
- 比重(相対密度)
- 溶解度など
10.安定性及び反応性
- 避けるべき条件(静電放電・衝撃・振動など)
- 混触危険物質
- 危険有害な分解生成物など
11.有害性情報
- 急性毒性
- 皮膚腐食性及び皮膚刺激性
- 眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
- 呼吸器感作性又は皮膚感作性
- 生殖細胞変異原性
- 発がん性
- 生殖毒性
- 特定標的臓器毒性、単回ばく露
- 特定標的臓器毒性、反復ばく露
- 吸引性呼吸器有害性
12.環境影響情報
- 生態毒性
- 残留性
- 分解性
- 生体蓄積性
- 土壌中の移動性
- オゾン層有害性など
13.廃棄上の注意
- 安全で環境上望ましい廃棄の方法
- 容器、包装の適正な処理方法など
14.輸送上の注意
- 輸送に関する国際規制によるコード及び分類など
15.適用法令
- 化学物質排出把握管理促進法に基づくSDSの提供義務
- 関連法令(他に適用される法令がある場合)
16.その他の情報
- 引用文献
- 作成年月日、改訂情報
- 含有率の説明(必要な場合)
- その他
なお、労働安全衛生法・毒物及び劇物取締法の対象となっている指定化学物質については、各法令への対応が別途必要です。
SDS翻訳が必要になるシーンとは?
化学品の提供先へのSDS翻訳文書の提出は法的義務がないものの、通関手続きや外国法人との取引などの貿易実務では提出を求められる場合があります。事前に翻訳文書の準備をしておくと、手続きや取引をスムーズに進められるでしょう。
また、輸入の場合も他言語のSDSは理解しづらいため、国内で最初に譲渡・販売する事業者による日本語への翻訳が望ましいとされています。
SDS翻訳で失敗しないために
SDS翻訳に求められる専門性
SDS翻訳は、対象国の言語に精通するだけでは満足な品質は期待できません。化学品の組成・成分情報・IUPAC(国際純正・応用科学連合)名称による化学物質名の理解などの化学的知識が必要なのはもちろん、化学物質排出把握管理促進法・労働安全衛生法・毒物及び劇物取締法などの国内法規への知識も問われます。OSHA・REACHなど各国法令の把握も必須です。
事業者が品質マネジメントシステムISO9001(品質管理・顧客満足度を目的とした国際規格)を取得している場合は、制度の理解を前提とした翻訳が行える専門性が求められます。
SDS翻訳の誤訳によるリスク
SDSは事業者が提供する化学製品の取り扱い・管理・廃棄などを記載した文書のため、翻訳時には注意が必要です。情報の記載漏れや分類ミスなどに気が付かないまま交付してしまうと、事業者・提供者間のトラブルにつながる可能性があります。
誤った内容で化学製品を使用して人体や環境に悪影響を及ぼせば、事業者が国から行政指導や製品の販売または営業の停止処分などの不利益を発生するおそれもあるでしょう。
翻訳でミスをしないよう、SDS翻訳は原文を正確に翻訳する必要があります。
SDS翻訳会社の選び方
工業・化学・法令の知識を持っているか
SDS翻訳は所定の形式に基づいた正確な翻訳が求められます。また、SDSはIUPAC名称での化学物質名の記載が一般的なので、通常の翻訳では見慣れない化学や工業特有の単語の取り扱いも必要です。翻訳者に専門知識が無ければ訳に窮してしまう可能性があるでしょう。
また、SDS翻訳は各国の法令に基づいて新規作成する必要があるため、翻訳対象国のSDS関連法令の知識も必須です。依頼する翻訳会社に工業・化学・関連法規の専門知識を有する翻訳者が在籍しているか確認しましょう。
SDS翻訳の実績があるか
専門性が高いSDSの翻訳を成功させるには、実績が豊富な会社を選びましょう。実績が少ないと社内のノウハウ・ナレッジが蓄積されておらず、品質不備や納期遅延といったリスクが高まるためです。
その場合、他の翻訳会社への再依頼によるコストや時間の増加につながるのみならず、事業展開に大きな支障をきたす可能性もあります。依頼前に必ず公式HPやSNSなどからSDS翻訳の実績を確認しましょう。
機密保持体制が整っているか
SDSの原文や資料には成分情報や含有率など機密性の高い情報が含まれており、漏えいすれば重大な損害につながる可能性があります。翻訳会社の機密保持体制も必ず確認しましょう。
具体的には機密性の絶対厳守・情報漏えい対策の提示のほか、機密保持契約の締結を含む柔軟な対応が可能かをチェックポイントとしてください。
安心してSDS翻訳を任せるなら
SDS翻訳を成功させるためには、翻訳会社の見極めが大切です。
弊社ケースクエアには、工業・化学・法令分野に精通した専任翻訳者が多数在籍しています。そのうえで、英語・中国語・韓国語・日本語間の翻訳に特化することで各言語の専門用語や表現の微妙なニュアンスを深く理解。独自に整備した用語集を活用して訳語選定の一貫性を保っているため、品質のばらつきを防いでいます。
情報漏えい対策も徹底しており、必要に応じてNDA締結も可能です。お見積もりの無料相談や翻訳無料トライアルサービスを随時受け付けておりますので、SDS翻訳をご希望の際はお気軽にお問い合わせください。
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まとめ
SDSは化学品の性質や取り扱いなどを記載した文書で、化学品を譲渡・提供する事業者は作成と交付の義務があります。
SDS翻訳が必要な場面は化学品の輸出入や外国法人の取引時ですが、翻訳には化学的知識やSDS関連法令などの高い専門性が必須。翻訳の誤りは人体・環境への危険を招くばかりか、法的指導や営業停止などに発展するリスクもあります。
自力での翻訳が難しい場合、実績が豊富でSDSに精通している翻訳会社への依頼も選択肢のひとつです。専門知識・翻訳実績・機密保持体制の3点を重視してパートナーを選び、SDS翻訳を成功に導きましょう。