機械翻訳の精度は十分?メリット・デメリットを人間と比較

機械翻訳(MT)とは?基礎知識を押さえよう
機械翻訳とは?
機械翻訳とは、人の手を介さずにコンピュータが自動で異なる言語へ翻訳を行う技術のこと。「Machine Translation」の略で「MT」とも呼ばれます。
Webブラウザやスマートフォンアプリなどで誰もが機械翻訳を簡単に使えるようになり、日常生活でも利用シーンが急速に増えました。代表的な機械翻訳サービスとして、2017年にサービスを開始したドイツのDeepLや、Googleが2006年からサービスを開始しているGoogle翻訳などが挙げられます。
機械翻訳が普及したことで、多くの人が簡単に世界中の情報を集めやすくなり、異なる言語を話す人とのコミュニケーションもとりやすくなりました。翻訳サービスが以前から使われているビジネスや学問、研究などの分野でも、機械翻訳の活用は進んでいます。
機械翻訳の種類
ルールベース機械翻訳(RBMT)
ルールベース機械翻訳(Rule-Based Machine Translation)とは、文法ルールや構文解析、辞書データなどをもとにコンピュータが翻訳を実行する手法です。機械翻訳の歴史はこのルールベースから始まりました。ルールにもとづいて処理されるため、意訳を必要としない分野での翻訳に適しており、翻訳結果に一貫性が見られる特徴があります。
一方で、ルールとして認識できないものは不自然な訳文が生成される点がデメリット。ルールで定義されていない表現に弱いため、柔軟な訳や翻訳精度にも限界があり、ルールやデータの登録・更新に人の手間がかかるため、現在ではあまり使われていません。
統計的機械翻訳(SMT)
統計的機械翻訳(Statistical Machine Translation)とは、対訳コーパスをもとにコンピュータが統計的に解析し、翻訳を行う手法です。
対訳コーパスとは、原文と訳文のペアを大量に集めたデータのこと。コンピュータはこのデータから単語やフレーズの対応関係を学習し、統計的に解析したうえで頻度の高いパターンをもとに訳文を生成します。
すでにある大量のデータを使うためルールや定義などの設定が不要で、確率にもとづいて自然な訳文を生成するのが主な特徴。一方で、学習データが不足すると翻訳精度が低下しやすいという弱点があります。
ニューラル機械翻訳(NMT)
ニューラル機械翻訳は人工知能の一種であるニューラルネットワークを用いた翻訳方法で、現在主流の方式となっています。
文章全体の意味や流れを理解したうえで翻訳を行うため、自然で読みやすい翻訳が可能。人間の脳の働きを模した「深層学習(ディープラーニング)」を使って文の前後の文脈を把握しながら訳語を選んでいくため、従来の方式よりも文脈に沿った柔軟な翻訳ができます。
ただし、見た目には自然な訳文であってもよく読むと意味が間違っている「流暢な誤訳」が起きる点がデメリットです。
機械翻訳と似た言葉
自動翻訳
自動翻訳とは翻訳処理を自動的に行う仕組みを指しますが、人の手を介さずコンピュータが翻訳を行う点で機械翻訳と大きな違いはありません。
自動翻訳の活用例として、自動音声翻訳やリアルタイム字幕、Webページ・チャットのテキストを即座に翻訳する機能などが挙げられます。いずれも利用者がリアルタイムで内容を理解できることを重視した使い方です。
「自動翻訳」という言葉は、翻訳技術そのものよりもユーザーが体験する利便性や即時性に焦点を当てた呼び方といえます。
AI翻訳
AI翻訳とは人工知能(AI)技術を用いて翻訳する手法であり、機械翻訳と本質的に大きな違いはありません。機械翻訳の中でも特に人工知能の技術を使った進化型の翻訳を指す言葉です。
一般的に機械翻訳は総称として扱われており、ルールベース翻訳や統計的翻訳、ニューラル機械翻訳もすべて含みます。一方、AI翻訳という言葉は主にニューラル機械翻訳などの人工知能技術を使った先進的な方式を指す言葉です。
「機械翻訳」という言葉が全体の枠組みを示すのに対して、「AI翻訳」は一つの手法を意味していると捉えるのがよいでしょう。
https://www.science.co.jp/nmt/blog/32334/
https://www.science.co.jp/nmt/blog/33942/
https://www.science.co.jp/nmt/blog/33792/
https://www.deepl.com/ja/publisher
https://tmjjapan.co.jp/topics/10117/
https://blog.google/intl/ja-jp/company-news/technology/2016_11_google/
https://www.alaya.co.jp/blog/?p=1214
https://www.k-intl.co.jp/blog/c18
https://jp.mathworks.com/discovery/deep-learning.html
機械翻訳と人間翻訳のメリット・デメリット比較
機械翻訳のメリット・デメリットとは?
メリット
人が行う翻訳に比べて、処理速度が速く大量のテキストを翻訳できる点が機械翻訳の主なメリットです。
翻訳者の手配が不要で時間や場所の制約がないため、緊急時にすぐ翻訳できる点も時間短縮につながります。無料で使える機械翻訳ツールを活用すれば費用がかからないため、翻訳者にかかるコストが不要になる分コストを抑えられます。
使い方は簡単で、機械翻訳ツールに原文をコピーして貼り付けるだけ。誰でも手軽に使えるため、翻訳者を探したり打ち合わせたりといった負担もありません。
デメリット
精度が高くなったとはいえ、機械翻訳では不自然な訳文が生成されるケースがまだまだあります。訳抜けや誤訳が見られることもあり完璧とはいえず、人によるチェックが欠かせません。
また、大量のデータを学習して訳文を生成していますが、学習データが不足しがちな専門用語への対応は不十分といえます。誤訳があってはならないビジネス書類や契約書、学術論文など、重要書類の翻訳への利用は難しいのが現状です。
さらに、機械翻訳ツールを使用する際に懸念されるのがセキュリティ面でのリスク。一部のサービスでは入力された文章がサービス改善や不正使用防止のために保存される場合があるため、機密情報や個人情報を含む内容を翻訳する場合、情報漏洩の可能性が否定できません。
セキュリティ対策として翻訳サービスの利用規約やプライバシーポリシーを確認し、必要に応じて企業向けの有料翻訳サービスの利用を検討しましょう。
人が翻訳するメリット・デメリットとは?
メリット
文脈やニュアンスを汲み取れるのは、人が翻訳する大きなメリットです。
機械翻訳がパターン学習にもとづいて訳文を生成する一方、人による翻訳では文脈を踏まえた細かな表現が可能なため、訳文の正確性・自然さにつながります。
また、直訳に偏らず自然で安定したクオリティを保ち、文化や法制度、習慣なども考慮して読みやすく豊かな表現の翻訳ができる点もメリットの一つ。専門分野に精通した翻訳者なら業界固有の用語や慣例にも対応でき、高品質な翻訳が期待できます。
デメリット
機械のように瞬時に翻訳はできないため、人が行う翻訳にはどうしても時間がかかります。また、翻訳者の経験や専門性に応じて報酬が機械翻訳より高額になるうえ、翻訳量が増えればコスト負担も増加。翻訳者が作業を終えた後、チェッカーによる確認作業を依頼する場合はさらにコストが発生します。
また、訳者ごとのスキルや分野知識の差で訳文のニュアンスや正確性にばらつきが生じやすい点もデメリット。安定した品質を確保するには、翻訳したい分野に精通した翻訳者に依頼する必要があります。
機械と人間はどちらの翻訳がいい?
機械翻訳と人が行う翻訳にはどちらにもメリット・デメリットがあります。どちらか一方に限定して利用するのではなく、目的に応じて使い分けましょう。
機械翻訳は、多少の誤訳や不自然さを問題としない場合や即時性を求める際に適しています。ただし、無料の機械翻訳はセキュリティ上のリスクがあるため、機密情報を含む翻訳には適していません。
人が翻訳する場合は時間がかかるものの、文脈やニュアンスを汲み取りながら正確かつ自然な表現の訳文を作成できます。
専門知識を必要とする文書の翻訳や、精度の高さ、細やかな感情表現を希望する場合は人による翻訳がおすすめです。
機械翻訳ではできない高品質な翻訳を実現するなら
AIの進化により機械翻訳の精度が向上し、活用の場も広がったことで、人による翻訳は不要だとする意見も見られます。しかし、機械翻訳に完全に任せられるだけの精度はまだ実現していません。
特に、ビジネス文書や法律文書、マニュアル作成や学術論文などの誤訳が許されない分野では、人の方が高品質な翻訳が期待できます。
専門知識をもつ翻訳者はただ単語や文章を訳すのではなく、専門領域や文化的背景などを考慮しながら自然な文章への翻訳対応が可能です。正確性はもちろん、訴求力のある訳文の作成も期待できます。
弊社ケースクエアでは専門分野ごとに経験豊富な翻訳者が担当し、ネイティブチェックにより正確で自然な表現を実現しています。高品質な翻訳をお考えの方は、ケースクエアまでお気軽にお問い合わせください。
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https://www.science.co.jp/nmt/blog/38979/
https://www.science.co.jp/nmt/blog/21127/
https://www.k-intl.co.jp/blog/B_191213A
https://www.intergroup.co.jp/blog/010
https://www.intergroup.co.jp/blog/031
https://www.interbooks.co.jp/news-room/the-importance-of-human-translation-in-global-business/
https://www.infocubic.co.jp/blog/archives/10460/
まとめ
機械翻訳は、個人でも企業でも活用が広がっています。リアルタイム性が求められる場面や多少不自然な訳文でも支障がない場合、機密情報を含まない翻訳などにおいては機械翻訳が有効です。
人による翻訳は時間こそかかるものの、文脈を汲み取り自然な表現の訳文を安定した品質で提供できます。専門知識が必要な文書への対応や、文化的な背景への配慮も可能です。
翻訳の精度を確保するという点では人による翻訳の方が優れているため、用途に応じて機械翻訳と人による翻訳を使い分けましょう。